窓。/田中宏輔
 
学校のトイレの窓ガラスは、むかしから割れていた。
洗面台の鏡の端っこに
生乾きの痰汁がへばりついている。
その鏡に、学校と隣り合わせに建っている整形美容外科医院の
きれいに磨き抜かれた窓ガラスが写っている。
トイレのごみ箱のなかには
いらなくなった鼻や乳房や骨が捨てられている。
妹は、小さなうなじに犬の毛を移植したい。
夜遅く帰ると
電車の窓の外に見える家々の窓たちは
奇跡に溢れていた。
宙に浮いて覗いてまわりたい。
幼い頃
真っ赤な薔薇の華を
妹の股の間に挟ませて眺めていたことがある。
動かすと、棘が引っかかって
裸のまま立たせた妹
[次のページ]
戻る   Point(12)