私達は仲良し/佐々宝砂
昔読んだ本を思い出した。浜辺に死体が打ち上がるんだ。人間の死体じゃないよ。怪物の死体だ。腐った死体だ。次々に打ち上がる。どこからきた死体なのか誰も知らない。浜辺を歩きながらそんな話をする。磯の匂いは腐敗臭だ。 目に見えるものも見えないものも、生きているものはいつかきっと腐敗する。
君は平べったい顔に薄っぺらい微笑みを貼り付けて、もともと飛び出ているような丸い目を、さらに丸くする。瞬きをほとんどしない君の表情はあまり知性を感じさせないが、君はあっさりと指摘する、それはプリニウスの博物誌でしょう、私はなにかの抄訳で読んだ。そうだったかもしれないとぼくは認める。
君はぬめる手を差し出してぼく
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