祭りのあと/室町 礼
名も無い荒野に
小さな篝(かがり)火だけが
いまだ燃えている
なんとまあ
いっそ全滅すればいいものを
どんな発言の末尾にも「クソ」をつけなければ
すまない男がひとり
燃え残った草葉の陰で
神に祈っているようだった
きちんと手を合わせ、心を込めて
ああ、わが主イエス・キリストよクソ
罪や穢れをお祓いくださいクソ
神様のお力によりお守りくださいクソ
幸せにしてくださいクソ
男は狼炎の上がる東に向かい
深いお辞儀をした
アーメン、クソ
わたしといえば立つこともできず
かといって歩くことはなをさらできず
手をこまねいてただ見ていた
絶望を
遠くから眺める観察者のよ
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