貧乏/鏡文志
れても、気は誰よりも確かだ
それもその筈、心と言われるところの物語共有としての言葉を誰よりも大切に持っているのだから
若く貧乏であるということは、いっぱいの牛乳瓶に中身が空っぽの状態のようなものだ
空っぽの牛乳瓶に牛乳が入る。まだまだ入る。注げば注ぐだけ入る。満杯になる頃には愛でいっぱいだ
これが最初から入っていたら、愛で溢れ、なにも要らなくなってしまう
恋に落ちる 別に落ちなくても良い 欠乏を抱えているうちに次第に余裕と人間に奥行きが出る
不満などあれば良い 足りなければ足りないほど良い
次第に高いところから見下ろしている自分に気づく
本当は、なにも欲しくなかったのだと
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