NWSF怪畸幻想譚 斬魔屋カンテラ!!『所謂ゾンビ病について』中・後篇/?任勇梓 Takatoh Yuji
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じろさん、泣いてゐたやうだ。自分は、悦美の為に涙一つ零せない。カンテラは憂愁に浸りつゝ、ランタンの中に籠もり、細い火を燈してゐた。と、
「お邪魔します」テオが猫用の出入り口から入つてくる。「だうやら、木嶋さんもやられたやうです」カンテラは、答へもなく絶句した。木嶋さん、とは、テオ=谷澤景六のマネージャー、木嶋美奈美キジマ・ミナミのこと。丁度タニケイとしてのテオが、アルベール・カミュの『ペスト』に迫るべき、『所謂ゾンビ病について』を書いてゐる最中の出來事だつた。
沈鬱な時が、兩者の間、カンテラとテオ、の間に流れた。ふと、「メールだ」テオが猫用のケータイホルダー(さう云
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