風の匂い/秋葉竹
この盆地の西の山の
てっぺんから吹く風は
なぜか大昔の野生の匂いがする
とおい異国のオレンジ農園に
水をまくホースにさす
錆びどめオイルのいい香り
ではなく
三千マイル走り続けた
大陸横断列車のせんとう
その機関車のエンジンルームのなか
たべたハンバーガーの
トマトとレタスに
かけたごま油ドレッシングの
ちょっと香ばしいいい香り
ではなく
駅前の歩道橋でやってる
俺さまなうたうたってるボーカルの隣
今夜は長髪でかみふりみだし
たまのあせはじきとばしながら
かき鳴らしてるアコースティックギターの
ピックのせいしゅんの
焦げく
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