風の匂い/秋葉竹
 
げくさいいい香り

ではなく


そんな風は吹き
吹き
吹きおろしつづけ
なぜかみのまわりで親しいひとが死ぬ
死神の異名を
硬い両手でにぎりしめた
わたしの闇のなか

キリキリ
ミシミシ
勇気を突き刺す鋭さで
吹く
吹き
吹き抜け過ぎ
つづける

わたしは乗り遅れないように
けんめいに風の匂いを
ほおばって
かみくだき
かみしめて
あすの予感のよって立つところを知る


この盆地の西の山の
てっぺんから吹く風は
なぜか大昔の野生の匂いがする


はるかむかし
無知蒙昧な「はじめにんげん」
その荒々しく身悶える雄叫び
二足歩行の「えんじん」の吐く強く熱い息
そんな風景をみたのに忘れた
クールな風の
なれの果ての匂いなのかもしれない








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