ペトリコール/あらい
真っ昼間の電車内は風の吹く砂浜にみる
軋む椅子が形が劣るだけで、重みすら恋をする
そとを眺めるのも、瞼をとじるのも
おだやかだと云う果実はつりあって
目にしたものを翳す
両唇はかすかに黄昏の気味がある
手のひらをあわせて
傾斜した陸地のくぼんだ所をながれる濁り
任意の時点で立ちどまった
星座のように、量とからだに夜とした
溺死体の私がゆるくたれて齧ってしまいたくなる
古びた本を開く景色はどこか遠くのこと
また瑞々しくせん引く擦弦楽器
ドローイング。草木も、家々も、
どこかしらムダにならんでいるだけ
反響に連鎖し、時に破綻をおこすから
まま雷雨にふれた窓ガラ
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