不香の花/リリー
 
 三輪車コロコロ転がして
 ゆるやかな坂を下る道、
 わづかに小石遊ばせて入る
 梅林

 手の届かない
 白くかすんだ花
 ちらつき始めた小雪が
 桃色のカーディガンに降り
 いつまでも とけなかった

 ふるさとの梅林に一人
 おぼろな夕方

 ×××

 薄い陽のさす石垣の上に
 二つ並んだ長い影がうすっぺらくて
 頼りなかった

 咲いている梅の花に
 匂いのないのが淋しくて
 ふと振りかえると
 あなたも同じ様に振りかえっていた

  把えたいのに
  どうして良いか解らない
  はかない予感が
  心の中を震えてすぎる
  目を
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