わかれまで/竜門勇気
 

家の前のサボテン
その横に灰皿
細長くて軽い草
細く痩せてきれいな花

足取りを追うようにして歩く
痕跡を見つけれるように願う
月が光るなら太陽はいらない
写真には映らない炎があるから

さよならまであと少しだよ
思い出したように君は言う

さみしくないようにもう少し頑張るけど
悲しくないようにもう少し頑張るけど
できるだけ頑張るけど
明日、きっと朝日はのぼるけど
ずっとずっとそうじゃないんだって
その準備を始めようね

季節の終わりを風が運ぶ
煙草の先が赤くなって
消えた光が灰を脱ぐ
誰も来ない部屋のなかに雪が降る

僕ももう少し頑張る
さみしくないように、悲しくならないように
夜が突き刺さって
サボテンは暗闇の中で泣いてる
その痛さはしってるよ
抱きしめる

剣のような針に貫かれても痛くなかった
そのまま、また煙草に火を点ける
目をつむったり空を見上げたりしながら
この気持ちをちんけな喪失に奪われないように
必死で針を深く押し込んでは
最後に見た虹のことを深く考えていた


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