いつかも歩いたその道を/ホロウ・シカエルボク
クローズと書いた札を吊るしている、小さな、カウンターだけの店が二十軒近く独房のようにずらりと並んでいる、近頃は大して儲からないみたいで、毎年六軒くらいは知らないうちに看板が変わっている、それでも違和感を覚えないのは、看板以外のものがまるで変わらないせいだろう、俺も以前は夜中にここを千鳥足で歩いたことが何度かある、でも、もうそんなことは十年近くやっていない、もともとそんなに酒を飲むことがそれほど好きではないし、時々つるんでいた友達は酒をほとんど飲まなくなってしまった、余程の気紛れでもない限り、この辺りを夜歩くこともそうないだろう…唯一良く通った店はマスターが亡くなってしまって、もう看板も変わってしま
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)