NWSF傳畸ロマン カンテラ・サーガ、ピリオド3『泰西堂主人』?/?任勇梓 Takatoh Yuji
【?】
じろさんの愛車・臙脂色の三菱デボネアを、またオーギュスタンが大袈裟に「おゝ、ビューティフル!」と褒めそやしてゐる間に、クルマは川崎のホテルから中野區野方までじろさん、オーギュスタンを運んだ。
「元義と木曾義仲との接點は殘念ながら不明です。私もその占ひ師の話は出鱈目だと思ふ。あの書には祟りなすやうなところは、一切ありません。じろさんオーギュスタンさんご足勞さまでした」
詩の愛好者であるじろさんも、泰西堂ではよく買ひ物をする。この古本屋の良いところは、掘り出し物がある、と云ふ事に盡きる。現代にあつて、古本屋で「掘り出す」のは一苦勞だ。どこの店も、ネットでの価格に左右された本の値付
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)