NWSF傳畸ロマン カンテラ・サーガ、ピリオド3『泰西堂主人』?/?任勇梓 Takatoh Yuji
 
値付け方をしてゐるせゐだ。
「ふーん、ぢや邪魔したね」じろさんはさつさと帰り支度して、二人は店を去つた。「いやに、あつさりしてるね、ムシュウ・コノイ」「あゝ、東堂さんは明らかに何か隠してゐるからね。さう云ふ時は粘つても何も収穫はない。瓢箪カラ駒と云ふ日本の云ひ回しが實現するやう、待つばかりさ」「何を、隠してゐるつて云ふんだ、トードーが?」「それは分からないよ。私の直感だ」
 かう云ふ時のじろさんの「野性の勘」は頼りになるのだ。程なく、それは立証される事となる。

 クルマがオーギュスタンの寄宿先まで辿り着く間、一つ椿事があつた。がたん、とクルマは突然路肩に乘り上げ、降りてじろさんが調べてみ
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