冬の窓辺/夏井椋也
 

冬の窓辺に立つ

枯木立の間から
キラキラ笑いながら
転がり出てくる子供達

寒そうな雲間を
名前も知らない鳥が
矢印になって渡っていく

冬の窓辺に立つ

だぶだぶの
オーバーコートに着られた
少し猫背の男の子

傍らの母親に
道の端っこを歩くと犬のウンチを踏むから
道の真ん中を歩きなさいと叱られながら
嫌々歩いている

大人になっても彼は道の端っこを歩き続けた

冬の窓辺から
窓の外の
今日の冬を眺める

冬の窓辺から
自分の内の
遠い昨日の冬を眺める

明日は

明日は窓辺からは見えない

というか
明日を眺めるために作られた窓なんて
ひとつもないはずだ



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