贋物譚/?任勇梓 Takatoh Yuji
 
るのだ)

さあ黄金バットの冒険譚
ずんと飛び出す紙芝居
不思議の國での活躍は
またの機會に譲ります

(こんなところでお里がバレてしまふ。紙芝居屋は
贋ものだつたのだ。マフラーの色がいつもと違ふ)

眠りに-

(子供らは催眠?態にある)

眠りに-

(こつくりこつくり。ハーメルンの笛吹き宜しく
子供たちは連れ去られやうとしてゐる)

眠りに-

(まづは上等な上着を着てゐる-と云つてもさうはゐない-
女の子、上玉だ。次に普通の「平民」の子、最後に
場末横丁の子)

眠りに。

(彼は自轉車に跨る。哀れな被害者たちは列をなして朦朧とその後を着いて行く)

ガキ攫ふ稼業も、流行小説ぢやないが『斜陽』ぢやの。
飴玉に混ぜる眠り藥も、なかなか入手し難くなつてきたわい。
まあいゝ。いつか儂の世がくる。
いつか儂の世が。

これにて物語はお仕舞ひ。皆さんも贋・紙芝居屋には
くれぐれも御用心、それでは!

#詩


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