或る人の肖像/川崎都市狼 Toshiro Kawasaki
 
嘯くに似るだけだ

だがこれが危険な唱じ方であるのも
僕は理解してゐた
自分だつてつひ
何か自分が知つてゐると思ふジャンルについて
得々と語り込みたくなる
衝動は持つてゐる
論が詩であると云ふ藝は
甚だ難しい藝なのだ

美しければその論は救はれるんだらうな
僕は獨りごちた
せめて彼の論に美を!
然し神は彼を救濟はしなかつた

論難する者の出現である
初めて彼の説に異を唱へる人があり
それに對するSさんの言葉は
拙きに終始した
「ざまあみろ」先の友が溜飲を下げると
僕はまた
「まああんなこともあるさ」
全く擁護になつてゐない擁護で

Sさんの終はりを語つたのだつた
彼に足りないのはとりわけ現在イマの詩なのだ と
僕は特記しておかう
と思ふ 麻痺?態を拔け出 感覺を界隈の
人びとが取り戻す前に、だ

かやうに魁の精神とは
大事な物なのだ と

#詩
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