イヴの手が触れるアダムの胸の傷あと ──大岡信『地上楽園の午後』/田中宏輔
 
でもあった。『パンセ』の断章三四八にある、この文章のなかの「宇宙」という言葉の背後には、「神」の如きものの影像が垣間見える。
 
 ヨハネによる福音書一・一に、「言(ことば)は神であった。」という聖句がある。大岡氏は、言葉は絶対者である、という。小生には、氏の見解が、福音書作者の視座に極めて近いものに思われるが、如何なものか。

──地上楽園の午後。あらぬところに思いを馳せた午後であった。








戻る   Point(9)