イヴの手が触れるアダムの胸の傷あと ──大岡信『地上楽園の午後』/田中宏輔
 
の『地上楽園の午後』という最新詩集のなかにも、


かんたんな話ではない
地上のすべてを押し流す大洪水の
まつただ中でノアのやうに
箱舟にまる一年も閉ぢこもるなんて
(「箱舟時代」第一連)

という連からはじまる詩作品があり、最初に引用した「友だちがまた一人死んだ」という詩篇のように、聖書の一節を引用し、それを軸として展開した詩行をもつ詩作品もある。「言葉の現象と本質──はじめに言葉ありき」のなかに、氏の、

 
 われわれは自分自身のうちに、われわれを所有しているところの絶対者を、所有しているのだ。


という文章があるが、これなどは、小生に、


キリストが
[次のページ]
戻る   Point(9)