世界のなかの奇矯な私/私のなかの奇矯な世界/岡部淳太郎
世界」のなかに私は放りこまれて
迷っているに過ぎないのだ
私のなかで世界が地図を失くして
さまよっているのと同じように
私もまた 世界のなかの迷子に過ぎないのだと
そうして迷いながらも
私は自らが何者なのかと問いつづけていた
世界もまた 私のなかで
自分が何者なのかわからずに
問いを繰り返していた
私のなかの問いと
世界のなかの問いがぶつかって
混じり合う時
ほんの一瞬だけ風が吹いて
私のなかの
世界のなかの迷路の埃を吹き払ったように思えた
私の奇矯さと世界の奇矯さもまた混じり合い
私と世界の双方の疑問が
氷解するかに思えることもあったが
それはほんの一瞬のことで
私も世界も 次の瞬間には
おなじみの解けない疑問に立ち還るのだった
夜になると
私と世界の双方の上で星がまたたき
謎は永遠につづくかのように
思えるのだった
(2025年1月)
戻る 編 削 Point(3)