名も知らない貴女を詠う/たいら
 
一言 二言 言葉を交わしただけの

名前も素性も知らぬ貴女よ

冬のコンクリートは冷たかろう

素裸なら尚の事

痛かったでしょう

辛かったでしょう

私は 貴女の 悲しみも 苦しみも

知ったこっちゃないけれど

冷たさと痛さは なんとなくわかるよ

一日が経って 何のお供えも無くて

不安定な蛍光灯が照らす駐輪場

その隅に ペットボトルの白湯を

貴女のために 私のために

これ以上 冷えてしまわぬように

ささやかな祈りを。
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