上海租界/栗栖真理亜
 
く泣きじゃくり
泣き止ませようとした母親に強く口を押さえられて
亡くなっていた
「◯◯ちゃん、ごめんね、ごめんね」
弟の亡骸を強く抱きしめながら
涙ながらに何度も詫びる母の姿が
少女の目に強く焼きついたという

母親は上海の頃に貯めていたお金を金歯に替えて
引き上げの時も隠し持っていたため
何とか家族が生きられるようにそれで生計を立てて
父親が中国から帰って来るのを待ち侘びていた
父親は帰国後も要職には就けず
その後女性は家族を支えるため苦労して国立大学の看護学校へ行き
看護師となったという昔の話
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