上海租界/栗栖真理亜
第二次世界大戦中の上海
天皇機関説を唱えた美濃部達吉の弟子だった為に
難を逃れて移り住んだ家族
話をしてくれた女性の方は当時まだ幼く
美濃部の弟子だった父親が教鞭を取る
東亜同文書院大学近くのイタリア租界に
女性とその父母と弟の四人家族で暮らしていた
そこから自由に行き来出来る共同租界で
少女はあるものを目撃する
大通りで日本の将校が中国人男性にスパイだと
言いがかりをつけ
軍用犬をけしかけて酷い目に遭わせていた
きっと軍用犬に噛みちぎられて中国人は
惨たらしい姿となっていたのだろう
「見ちゃだめ!」
女性の母親は思わずショッキングな現場から
我が子の目を逸らさ
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