人格と世界観9・直観的思考と詩心?/ひだかたけし
 
な活動によるものだった。
けれども、彼はその活動を考察の対象にはしなかった。
彼は認識行為の楽屋裏を覗こうとはしなかったのだ。

 ゲーテは内奥の人間本性を考察したり、自己省察をしたりすることが苦手だった。
「…もともと私は『汝自身を知れ』というたいそうな課題をいつも疑わしいものと思っていた。
…世界が分からなければ、自分も分からない。
人間は世界を自分の中にしか見出せないし、自分を世界の中にしか見出せない」。
 この点は、まさに逆が真なのである。
すなわち人間は、自分が分からなければ、世界も分からないのである。
なぜなら、人間の内部には、外界の事物の中でもっぱら残照として、比
[次のページ]
戻る   Point(2)