ウォーキング/栗栖真理亜
散歩から帰ってきた母と入れ替わりに私も外へ出た
6時を過ぎたばかりの夕方の空はまだ明るい
スロープ状の坂を下って土手へ降りると
むうっとした草独特の臭いがマスク越しでも鼻についた
手入れもされず伸び切った雑草が風で揺れている
思わずマスクの上から鼻を手で押さえ土手沿いの白い道を早足で歩く
川は少し陰り気味の陽射しを浴びて白く襞を帯びながら輝いていた
川に沿って土手に設置されたコンクリートのベンチの側では
若い男性が手足を動かして何やら屈伸運動でもしているようだった
少し過ぎると小型の可愛らしい犬を連れたご婦人とすれ違う
犬は飼い主にリードで制されているためか吠えもせずに大人
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