WELCOME TO THE WASTELESS LAND。──詩法と実作/田中宏輔
 
った。エリオットの『荒地』(The Waste Land)を読むと、「ひからびた岩には水の音もない。」「ここは岩ばかりで水がない」「岩があって水がない」「岩の間に水さえあれば」「岩間に水溜りでもあったなら。」「だがやはり少しも水がない」(西脇順三郎訳)とあって、こういった言葉に、主題が表出されているような気がしたのである。「主はわが岩」(詩篇一八・二)と呼ばれており、イエスの弟子のペテロという名前は「岩」を意味する(マタイによる福音書一六・一八)言葉である。筆者には、「岩には」「水がない」というところに信仰の喪失が象徴されているように思われたのである。「一方を思考する者は、やがて他方を思考する。」
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