風の駅/たもつ
 


庭先には
風で出来た駅があった
物も事も停車しない
すべてが通過してしまう
寂れた駅だった
夜が明ける頃
母は庭に洗濯物を干し始める
それから弁当をつくり
朝食の準備をすると
わたしと弟を起こし
仕事にいくのだった
何かが停車するのを
待っていたのだろうか
時々、風の駅の方を
見つめていた
おそらく擦り切れるだけの
母の毎日の中で
わたしも弟も幸せだった


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