かさなる坂には逆らえない/菊西 夕座
坂の最後に名が落ちていたら
さかなにあげてください
と坂が頭をあげて願いでた
ひとに頼むなら頭を下げろ
と坂をふんであがっていくと
坂が途中から逆立ちをして
先に下げておくべきでした
とへりくだってきたものだから
坂をおりきったところで
落ちていた名は傘だった
さかさにしなくてもよい
と坂をなだめて上っていくと
なを坂にすることをゆるせば
なお坂をいかねばならないと
どこまでも坂がなおつづいた
あまりにもさかのぼりすぎると
いつのまにか時の坂をくだり
猿だった時をへて魚にまでなり
そこでようやく名をあたえると
逆波がうねりを起こして坂になり
まっ坂さまが頭を
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