IN THE DEAD OF NIGHT。──闇の詩学/余白論─序章─/田中宏輔
 
くは数個の考えが同時に存在すること」(ノヴァーリス『断章と研究 一七九八年』今泉文子訳)があるが、わたしたちの精神は、それらの間を、始終、往還しているのである。それというのも、「同じものでありながら、いつも快いものは何ひとつ存在しない」(アリストテレス『ニコマコス倫理学』第七巻・第十四章、加藤信朗訳)からであって、「それは、われわれの本性が単一ではなく、われわれが可滅なものであるかぎり、或る異なる要素も含まれているからである」(アリストテレス『ニコマコス倫理学』第七巻・第十四章、加藤信朗訳)が、それゆえにこそ、文学には、「前とは違った眼で眺める」(エリオット『イェイツ』高松雄一訳)ことのできるもの
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