IN THE DEAD OF NIGHT。──闇の詩学/余白論─序章─/田中宏輔
 
て……。

知つてゐた? 夜が明けるといふこんな奇蹟が毎日起こつてゐることを

うすくひらかれたきみの唇。そつと、ふれてみる。やはらかい……。

君のまへで貝の釦をはづすとき渚のほとりにゐるごとしわれ

指でなぞる、Angel の綴り。きみの胸、きみの……。

書物のをはり青き地平は顕れし書かれざる終章をたづさへ

もうやはらかくはない、きみの裸身。やさしく、かんでみる……。


 一九九二年の春に出した同誌の第五号では、同人の林が上梓した第一歌集の『ゆるがるれ』のなかから七首を採り上げ、それらの歌を通して、林の造形技法について論じた。そのうち、三首をつぎに引用する。
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