残光、死して/ひだかたけし
肉と云う器の酷薄さに
今年もう二十七に成る筈の愛娘を重ね想えば
しろくかがやく砂浜を踏み締め
汀へと歩いていった娘の
初めて海を見る茫洋とした表情の
いくばくかを掴みたく追い縋る私に
たたしろくしろく跳ね返って来る残光
海を初めて見た太古の人 、
その原初の時の瞬間
極まる静かさに潜在スル
途方もなく巨大な何者かの
息遣い仄かに残響し続け
彼女と二人でブランチをまた 、
真白くうねるポテトサラダの脇に
小山となり積み重ねられた
グリーンピースの緑の盛り上がり、
濃縮され集まった艷やかな彩
静かさの深みに極まる如く
すっと収縮し消滅スルを観て
想わず息を呑む私の なか、
予め終わりを想定しつつ
蠢く巨大な思惟の余韻震え
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