風の呼吸/天草原悠
もし私が一陣の風ならば
空の窓辺を叩き
君の頬をそっと撫でて
飛び去る、飛び去る、飛び去る
この広い世界に私の行く先がある
低い谷間には降り立たない
冷たい影には触れない
荒れ果てた道には迷わない
飛び去る、飛び去る、飛び去る
見よ、私には私の行き場所がある
黄金の夕陽が海に溶けるとき
私は君の髪に宿る
光と共に、そっとささやき
柔らかな時を編み上げる
飛び去る、飛び去る、飛び去る
君の声が私を呼ぶ、その瞬間まで
私が風である限り
君の側を吹き抜ける自由でいたい
温もりを残し、記憶を残し
そしてまた、次の空へ旅立つ
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