放課後/ryinx
 
かつて
グラスから溢れ落ちた
水の音と
いつかの記憶と

夢であり、そのなかの現実であり、
日常と、仮設された風景に。

壊れた右手に接続された眼が、
路地裏に放置された
光の内側を移動している
私の在ない、世界を
裏側から観ていた、
せかいは ただ
あたりまえのように。

遠くの
雑木林に
ひとひらに舞う
蝶の羽根のように、
千切られては舞い落ちる
秋の気配と

錆びた鉄のように、
崩れ落ちた
河川敷に、
流れる

乳白色の
ペンキ、
或いは

幻と
そこにはいない
誰かの声が
聞こえる

記憶の
なかの
放課後の
風景と、

昨年、
黒い陽が
空を覆ったとき

誰もが傘をさして
ただ、
じっと立ち尽くす
映像と

声が聴こえる
遠く、記憶の彼方で



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