王國の秤。/田中宏輔
きみの王國と、ぼくの王國を秤に載せてみようよ。
新しい王國のために、頭の上に亀をのっけて
哲学者たちが車座になって議論している。
百の議論よりも、百の戦の方が正しいと
将軍たちは、哲学者たちに訴える。
亀を頭の上にのっけてると憂鬱である。
ソクラテスに似た顔の哲学者が
頭の上の亀を降ろして立ち上がった。
この人の欠点は
この人が歩くと
うんこが歩いているようにしか見えないこと。
『おいしいお店』って
本にのってる中華料理屋さんの前で
子供が叱られてた。
ちゃんとあやまりなさいって言われて。
口をとがらせて言い訳する子供のほっぺた目がけて
ズゴッと一発、
お母さんは
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