むちゃくちゃ抒情的でごじゃりますがな。/田中宏輔
 
っぱの落ちる音に耳を澄ましていた。
いつの日だったかしら、
わたしがここで死んだのは。
わたしのこころは、まだ、どこかにつながれたままだ。
こわいぐらい、静かな家だった。
中庭の池には、毀れた噴水があった。
落ち葉は、自分がいつ落とされたのか忘れてしまった。
缶詰の中でなら、ぼくは思いっ切り泣ける。
樹の洞(ほら)は、むかし、ぼくが捨てた祈りの声を唱えていた。
いつの日だったかしら、
少女が、栞(しおり)の代わりに枯れ葉を挾んでおいたのは。
枯れ葉もまた、自分が挾まれる音に耳を澄ましていた。
わたしを読むのをやめよ!
一頭の牛に似た娘がしゃべりつづける。
山羊座のぼくは、どこまでも倫理的だった。
つくしを摘んで帰ったことがある。
ハンカチに包んで、
四日間、眠り込んでしまった。


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