まよなか/秋葉竹
 

みんな手厚くやさしくくるんで
守りつづけてくれるでしょう


かつてふたりが初めて
ほんとうに信じ合えた夜に
そしてその奇跡の夜が明けた朝に

こころを慈しむ言葉の白さが
あんな声を出せる純愛の輝きが

この世界の忘れがたい想い出を
けして青空は削り取れない明るい事実として

罪を犯したことのないものなんて
いるわけがない世界を映す必要なんかなく

ただ月光が美しい夜はそこにある
ほほ笑みならそこにあるでしょう?


ねぇ、ほら

深い夜には市場も眠り
猫も夜盗もいないでしょう

ただ美しい死の香りがする
ただ月光が石畳を照らす夜が好き


でも、なら、

恋に焦がれた夜もあったって
そんなうっすらとした記憶を手繰り寄せ

ただ美しい死の香りのする
ただ昔を懐かしむだけの静かな夜が好き







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