たましいの重さ/凍湖(とおこ)
 
手のひらですくえるほどの軽さ
ふっと息をかければ羽毛のように
水のようにさらさらと
それくらい
それくらいと言いたいのに

あなたが踏んだ泥は何億年後かにも
化石になって残るだろう
ただの偶然によって
それくらいの重さ

とても寒い日の深夜
渋谷のバス停で夜をしのいでいた人が
殴られて
朝を迎えられなかった
その夜明けの色

消えていく人は消えていき
あなたは覚えている
そのうちあなたも消えて
あなたを覚えている人も消えて
それでも足跡の化石がどこかに

その千々に乱れた記憶が
重くて消えない
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