くぼみをうめるあやかな幻想/菊西 夕座
 


もはや傷口はたんなる凹みではなく名前をもった惑星都市であり
決まった和音とメロディーによって築かれた完璧無瑕(むか)の城砦
そこでは夜のガスパールが鼠の歯型から虫歯たちの乙女座を空に編み
アルチュール・ランボーが空を見上げて靴紐の竪琴で母乳をしぼる!

街路樹が紙ふぶきのように惜しみなく葉をちらせる陽光のしたで
澄みわたる秋空と競うように剥きだしにされたあの子の脚は
あまりに透きとおってはちきれんばかりに道をわたっていくから
まるで祝祭じみた気分で黄金の杯のブラジル珈琲を空にする。

   ・・・・・・杯の底には夜が白い腹を見せてうたたねしていた

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