THE GATES OF DELIRIUM。/田中宏輔
しい。すると、詩人の友人は、躊躇うことなく、即座に、こう答えたという。「これは、オレとは違う。」と。ペンネームを用いることさえ拒絶されたらしい。「これは、オレとは違うから。」と言って。詩人は、その言葉に、とても驚かされたという。そこに書かれたすべての言葉が、その友人の言葉であったのに、なぜ、「オレとは違う。」などと言うのか、と。詩人の行為が、その友人の気持ちをいかに深く傷つけたのか、そのようなことにはまったく気がつかずに……。その上、おまけに、詩人は、自分ひとりの名前でその詩を発表するのが、ただ、自分の流儀に反する、といっただけの理由で、怒りまで覚えたのだという。すでに、詩人は、引用のみによる詩を
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