お見舞い/そらの珊瑚
すっかり葉を落とした樹の枝々が
落ちてくる曇天の空を手を広げて支えている
これから
冬へとむかう日々は時に
こころさみしく
或いは
神様のきまぐれで
ぱああ、とみるみる空が晴れれば
なにやら希望が差してもくるようでもある
昨日お見舞いにもらった赤い林檎は
その身の内からしみだしてくるお日さまのつやをまとい
まるかじりするのが一番美味しいのだろうけれど
病身の父には無理な話だった
すりおろした林檎は
痛々しげに茶色くなり
おせじにも美味しそうではなかったけれど
美味しそうだよ、と
白く着色するように
わたしは笑顔でひとつ嘘をつく
出窓に来て止まる小鳥は
父にいわせるとそれもお見舞いのたぐいだった
小鳥の名前はトリコとトリオ
鳥の見舞いはいいぞ、なんにも訊かないからな
こっちも無理してとりつくろうこともない
父の嘘は真顔だったから
或いは
真実だった
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