真夜中には哀歌を、不吉な目覚めには朝の光を/ホロウ・シカエルボク
 
閉め切った部屋の中では窓の外の様子もつかめない、ただただずっと、苛立たしい音が内耳で響き続けている、不意に、昔本で読んだ話を思い出した、ある人が耳鳴りが止まらないからと耳鼻科を訪れたら、ビッグサイズの蜘蛛だかムカデだかが耳の中に入っていた、という話だ―俺はその可能性について考えてみた、とはいえ、耳の中で金属パイプでひたすら殴打するような音を立て続ける虫を俺は知らなかった、だから俺はひとまずその可能性を排除した、気分を紛らわすために原因を探ってみることにした、なにかしらの小型の発信機のようなものはどうだ?もちろん、仕込まれたわけじゃなくて―些細な事故みたいなもので俺の耳の中に滑り落ちて、救助信号を発
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