雪虫図/中沢人鳥
 
口腔から溢れた針金が行き交う夜の天井
模られる雄牛、大犬、鳩、オリオンの面々
例えば、
任意の雪塊を視線で繋いだ線分は、
ふたご座になりきることができるだろうか
死んだセミが凍っている排水溝の側
雪虫はその予感に誘われて
辿り着いた子の手のひらに囲われて
赤褐色の冷たい石畳を埋める
雪が積もっていると
声がする

青い鉄扉から隙間風
舞う、雪、虫
セミは重たい
いつまでそこに鎮座しているのだろう
排水溝の側で

いつか田圃を走る車の後部座席から
上を視る
うすら視える寂光と寂光を結んだ
線分の両端のどちらか
そのどちらかを、
そしてもう一方を。

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