名前/カワグチタケシ
 

我々が呼吸できる大気は限られている

なのに
我々はいつからか
自らを生かすのに必要な以上のものを狩り
また作るようになり
それは争いの
また災いの
種をなした

戸棚の奥でうずくまる少女

空の底にはまだ日の名残りの明るみが残っているが
天はすでに夜の色に変わっている
松明を持った兵士が
背の高い一人の男を案内してやってくるのが見えた

断片的な記憶
断片的な映像
断片的な記述
断片的な
断片

あんなに好きだったのに
名前が思い出せない
感情の密度だけが感触として記憶されている

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