真夜中のゲーム/ホロウ・シカエルボク
 
うな女が、それから山に登って歌をうたうなど考え難い、綺麗な声だった、優しい声で歌う時のサム・ブラウンみたいな声だった、俺は人魚の歌に引き寄せられる船乗りの如く、その歌声に向かって階段を登った、不思議なことにその歌声は、どんなに近付いてみても歌の主がどこに居るのか突き止められなかった、すぐ近くで聞こえているような気がするし、ずっと遠くで聞こえているようにも思えた、木々に阻まれて、明るい月の光は階段まで届かなかった、なのに不思議とライトを照らす気にならず、黙って階段を登った、頂上にある展望台まで来てみたけれど、女の姿はどこにも見当たらなかった、けれど歌声は確かに聞こえ続けているのだ、いったいどこに居る
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