スターズ&ストライプス/カワグチタケシ
通りから声は聞こえない
ひさしぶりに集まった友だちは
思い思いの姿で
丘の上の草に座って
海を見下ろしている
さざなみに光が踊っている
潮騒は丘の上には届かない
木々の葉を通り抜ける風の音だけが聞こえる
みんな黙っている
狭くて両側に高い建築が並ぶ
日当たりの悪い通りを歩く
冬だというのに
夏の習慣から逃れられない
祈りの声が聞こえる
まだ真っ暗闇ではないが
じきにそうなる
それに気づいた者だけが
灯りを手に入れる
あたりがすっかり暗くなってからでも
手遅れということはない
祈りの声が聞こえる
声は段々遠くなる
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