THE GATES OF DELIRIUM。/田中宏輔
ときにも、陽はまだ落ち切ってはいなかった。しかし、公衆便所の輪郭や、潅木の茂みの形は、すでにぼんやりとしたものになっていた。飲み終わったコーヒー缶をクズかごに入れ、便所の前にあるベンチに腰かけると、タバコに火をつけて、ひとが来るのを待った。詩人を待っているのではなかった。詩人が現われるとしても、それはすっかり夜になってしまってからであった。タバコをつづけて喫っているうちに、便所に明かりが灯った。時間がくると、自動的に電灯がつくのであった。だれも来なかった。
詩人がいつもいたところに行くことにした。詩人はよく、少し上手の河川敷に並べられたベンチの一つに坐っていた。ぼくは、道路を渡って河川敷に向か
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