双子/ダニケ
双子は、ふとし、ひろしという名前だった
冬は人を太くするための、夏は人を広くするための季節なのか
「いかにも」と長老は言った
その手紙はどこまではめくっていいものなのか
花は空を信じて、まるで淀んだ水をくぐるかのように咲いた
かつては、醜悪さを嗅ぎ取れないことが花になるための条件だとされていた
そしてそれは、死を恐れる人をあざけることと背中合わせの資質だった
彼は「この手紙はいくら遅れてもいいから、」と言った
切り壊したものが残れば悪、消えれば善だとされた
肯定されるその場所で、目を開けばしだいに違和感を感じ取れなくなってしまう気がしていた
「いかにも」と長老は言った
「おまたせ」と呼ぶその声にこそ彼は振り向きたかった
そして双子の毛並みは果たされた約束に洗われる
結婚式の行列のアリにまたがる妖精。双子からの久しぶりの電話を長老は取った。花畑の、中でもおてんばに咲く花は彼のすぐそばで仮眠をするように静かに電話を聞いていた
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