にせもの/
やまうちあつし
朝起きてカーテンを開けると
電線にわたしがいる
鳥の姿をしているが
見間違うわけはない
数十年かけて探し回って
こういうかたちで出会うとは
じっとこちらを見ているが
とくに興味はなさそう
ひとしきり首をかしげたり
羽毛をつくろったり
つかまえなくていいの
と幼い娘
そういうものでもないんだよ
とすっかり成長した娘
そうこうするうち
飛び去るわたし
黒い翼が
本当にまぶしい
いかにもわたしは
わたしのにせもの
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