異変/ホロウ・シカエルボク
に見えているのは、部屋とそこを区切っていた壁が取り払われて、壁紙が剥がれたりとかしたせいのようだ、いや、だけど…本棚やステレオ・システム、テレビやパソコンなどの一切は、盗まれたのか、あるいは他の理由なのかわからないがすべて無くなっていた、もう一度窓の外を眺めたが、そこにもやはりなにも見当たらなかった、携帯の画面をつけてみたが、電波はまるで無いという表示になっていた、ルーターが無くなっているので、WiFiに繋げることも出来なかった、災害用のチャンネルにもかけてみようとしたが、何の音も聞こえて来なかった、昔の固定電話に例えれば、線が切られているという状態と同じだった、古い漫画を思い出した、自分の部屋だけがどこか―未来か過去かどこかへ移動してしまった、そんなこと起こり得るだろうか?ふと、腹が空いているのに気付いた、窓の外でなにか、低い唸り声を聞いた気がして振り返ると、熊と虎のハーフのような奇妙な獣がこちらを睨んでいた、どうやらそいつも腹を減らしているらしかった、まいったな―武器になるようなものは見当たらなかった、獣が一声、高く太い声で吠えた。
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