初夏/
 
いけないし持ってもいけない
形を変えてしまうか立ち去っていくのだ
そうさよならも言わず
僕は物語が書けない
だからもう空想はしない


雨が降っていて時間は止まっているかのよう
僕は彼女の見ていた旅行誌を眺め
彼女の顔を眺めた
しばらく眠った彼女は目を覚ますと
「また眠ってるとこ見られちゃった」と照れて笑う


僕はうんうんと頷きながら

部屋を整理しているときに
段ボールにしまうことの出来なかった写真や
彼女の残したものを手に
暗くなってゆく夕暮れ
僕は空想をしない
だから詩を書いてみる




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