定めの夜/ホロウ・シカエルボク
て煙のように消えただけだった、ああ、アンジー、と俺は小さく口ずさんだ、誰かが背後のピンボール・マシンで新記録を出したようだった、近頃は煙草を吹かす人間が減った、まあ、俺はもともと吸わない人間だけれど、この店で誰かが吸っている煙草は不思議なことにまるで気にならなかった、窓の外を見た、いっときは雨が降りそうな感じになっていたけれど、どうやらそんな気配はどこかへ去って行ったようだった、俺は何度か頷いた、そうさ、すべてのものは去っていくんだ、それは決まっていることなんだ、こうしてダイナーのカウンターでやり過ごすくらいしか、人間に出来ることは無い、夜は勝手に更けていく、そして夜であることが分らなくなった頃に
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